改正保険業法施行後、私たちの活動はどう変わるか<音声配信あり>

先週、令和7年改正保険業法(1年以内施行)に係る「保険会社向けの総合的な監督指針」等の一部改正(案)におけるパブリックコメントの結果について、「金融庁の考え方」が公表されました。改めて改正保険業法は、今年2026年6月1日に施行されます。施行日まで2カ月を切ったということです。

まずは、皆様先週公表された「コメント概要及びコメントに対する金融庁の考え方」はお目通しされましたでしょうか。私もこの週末アポの合間で、本資料に目を通しました。ここを読むと、今年の6月以降、どういう点が変わってくるのか、現場レベルでどういう対応が必要になるのかなど見えてくる部分は多々ありました。今日は(この時期しか書けないので)、パブコメに対する金融庁の考え方を受けて、「改正保険業法施行後、私たちの活動はどう変わるか」というテーマでお話ししたいと思います。

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では、本題です。今日は、「改正保険業法施行後、私たちの活動はどう変わるか」というお話ですが、そもそもなぜ保険業法が改正されるに至ったかについて触れたうえで、改正のポイントを整理し、求められる対応を考えてみたいと思います。

そもそも、今回どうして保険業法および監督指針が改正されるに至ったか。なんとなくは理解していても改めてと言われるとわからない方もいらっしゃるかと思いますので、ここから整理します。

今回、保険業法および監督指針が改正された背景には、大きく分けて2つあります。1つは、ここ数年で発生した「大規模保険代理店での不祥事件」です。もう1つが、ここに関連する話で、大規模代理店で浮き彫りになった「保険会社と大規模代理店との間のいびつな力関係」という問題があります。

詳しくみていきましょう。まず皆様もご承知のとおり、2023年、大規模な損害保険代理店における「保険金不正請求事案」が発生しました。これは発端の一つとして、自動車修理業などを兼業する損害保険代理店において、保険金の不正請求事案が発生したことが挙げられています。これを重く見て、兼業代理店における利益相反(自社の修理部門の利益を優先して不正な見積もりを行うなど)を防ぐための体制整備が急務となりました。

次に、保険会社と大規模代理店の「力関係の逆転」という問題です。こちらは生保分野かもですが、保険代理店が大規模化(特定大規模乗合代理店という)するにつれて、保険会社側の「営業上の配慮(自社の商品をたくさん売ってもらいたいという気遣い)」が働きやすくなり、保険会社と代理店との力関係が逆転する傾向にあることが明らかになったわけです。この力関係の逆転により、保険会社から代理店への過度な便宜供与(特別利益の提供 通称:カドベン)や不適切な手数料の設定などが発生しやすい土壌ができていたという指摘です。

また、複数の保険会社が委託することによる「管理・指導の形骸化」もあります。大規模な乗合代理店には複数の保険会社が業務を委託しています。そのため、「他社も委託しているから」といった理由で、個々の保険会社による代理店への適切な教育や管理・指導が行き届きにくく、問題が生じやすい状況にあるという点が指摘されていました。

つまり、「代理店が大きくなりすぎて保険会社がコントロールできなくなり、結果として不正や不適切な募集につながる環境(保険会社による過度な便宜供与など。これは代理店にも問題があった)が生じやすくなっていた構造的問題」を是正し、顧客の利益を守るために、今回の厳しい改正が実施されたと考えるといいと思います。

この、「そもそも、なぜ保険業法および監督指針が改正されることになったか」を整理したうえで、今回のパブリックコメントに対する金融庁の考え方を、ぜひ皆様一度読んでみてください。

▼コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方▼

https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20260330-2/01.pdf

▼(上記と合わせて)保険会社向けの総合的な監督指針(新旧対照表)▼

https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20260330-2/02.pdf

私は出版社にいたのでわかりますが、こういう文書を読むときは、いきなり予備知識がないままに読むと、心が折れて二度と読まなくなります。そうではなく(本もすべてそうですが)最初は「あたりを付けて読む」という癖づけをするといいと思います。「あたり」があると「おそらくこういう流れ」という、予見を立て読み進めることができるので読みやすくなると思います。

話題が逸れたので戻します。

今回の改正における重要なポイントを、4つに絞ります。それは、私は以下だと思います。

1:「特別利益の提供」に関する規制の具体化・明確化

2:「特定大規模乗合保険代理店に対する体制整備」の義務化

3:兼業代理店の「保険金不正請求を防ぐ態勢整備」

4:委託元保険会社による「代理店の管理・指導」の強化

順番にみていくことにしましょう。

1:「特別利益の提供」に関する規制の具体化・明確化

→今回の改正では、保険募集において「特別利益の提供」として禁止されるかどうかを判断する基準が、「有償の取引」と「無償のサービス・物品の提供」の2つに明確に切り分けられて、それぞれの具体的な判断要素が明文化されました

<有償の取引(対価を伴うもの)の明確化>

私たちの商品には、医療保険などで「付帯サービス」があると思います。この「付帯サービス」以外の、物品の購入や役務の提供等の取引について、「取引上の社会通念に照らし相当であると認められないもの」となっていないかという視点で判断されます。具体的には以下の要素で該当性が判断されます。

・保険契約の締結や引受シェアの調整を前提としていないか

→有償でセミナー等の役務提供を行う場合、それは監督指針(Ⅱ-4-2-2(8)①ア)における「取引」とみなされます。

・事業運営上の必要性に照らして過大ではないか

・価格などの取引条件が、一般的な相場と比較して「著しく不合理」ではないか

→この、「著しく不合理」という点が不明ですが、例えば、自動車修理業や住宅メーカーを兼業する募集人が、顧客の車両修理や住宅修理を有償で請け負う場合、上記の「著しく不合理な価格ではないか」等の基準に照らして判断されます。

<無償のサービス・物品の提供の明確化>

対価を伴わない各種サービスやノベルティなどの提供については、従来通り以下の要素で「社会相当性」などを逸脱していないかで判断されます。

・経済的価値や内容が、社会相当性を超えるものとなっていないか

・換金性や使途の範囲から、実質的に保険料の割引・割戻しに該当するものとなっていないか

例えば、セミナーで「ケーキ」が出てくるとか、そのあたりは非常に難しい判断になるのかと思います。また、今回のコメントでは触れられていませんが「無償のライフプラン」が該当するのかどうかも不明です。。

2:「特定大規模乗合保険代理店に対する体制整備」の義務化

→今回の改正で大きな影響をもつ、「特定大規模乗合保険代理店(特定大規模乗合生命保険募集人および特定大規模乗合損害保険代理店)」ですが、この定義は、「2社以上の所属保険会社等から受領する手数料や報酬等の総額が20億円以上に達する大規模な乗合代理店」を指します。この規模の判定は、別個に登録された事務所単位ではなく、一つの法人単位で行われます。この定義が出たときに、SNSなどでは「では、小規模代理店はスルーされるのか?」みたいな、トンチンカンな意見がありましたが、先に触れた、そもそも「今回の保険業法が改正された理由」をみるとわかりますね。この定義にされた背景には、代理店が極めて大規模になることで、保険会社側からの「営業上の配慮(自社商品を優先的に売ってほしいという力関係の逆転)」が働きやすくなり、適切な管理が行き届きにくくなるという構造的な問題を是正するためです。

求められる具体的な体制整備の内容ですが、特定大規模乗合保険代理店に対しては、以下の厳格な上乗せの体制整備(業務運営に関する措置)が義務付けられます。

・各営業所への「法令等遵守責任者」の設置

→保険募集を行う営業所または事務所ごとに「法令等遵守責任者」を設置することが求められます。ここは、営業担当とも兼務はOKとされました。

・営業部門から独立した「統括責任者」の設置

→会社全体(原則として法人の本店等に1名)を管理する立場として、営業部門からの独立性を確保した上で「統括責任者」を設置しなければなりません。ここは、コンプライアンス部門の責任者などを選任することが想定されています。

・独立した「内部監査態勢」の構築

→保険募集の業務について、定期的に内部監査を行うための責任者を設置する必要があります。

・保護された「内部通報体制」の整備

→役員や従業員からの法令違反等に関する通報・相談に応じるため、適切に対応する責任者を設置し、社内規則を整備することが求められます。

→ある保険会社の業務において不祥事件が発生した場合、その保険会社に報告するだけでなく、業務委託を受けている「他のすべての所属保険会社」に対しても、遅滞なく事件の概要を通知する義務が課されます。さらに、他社の商品でも類似の不正が行われている疑いがある場合には、問題を起こした募集人の氏名等を他社にも共有し、各社が行う調査に全面的に協力する体制を整備することが求められています。「悪いことをすると、業界に残れません」という意味です。

3:兼業代理店の「保険金不正請求を防ぐ態勢整備」

→自動車修理業などを兼業する損害保険代理店(兼業特定保険募集人)において、修理費の過大見積もりなどによる保険金の不正請求を防ぐための厳しい規定が新設されました。

4:委託元保険会社による「代理店の管理・指導」の強化

→特定大規模乗合保険代理店における不適切な募集を防ぐため、業務を委託する保険会社側の管理責任も強化されました。保険会社は、委託に関する「委託方針」を策定し、定期的に検証することが求められます。

すみません。3と4も膨大な量になるので、3、4は割愛させていただきます。リクエストがあれば解説します。

先週、「法令等遵守責任者」の試験もどういう感じになるかがある程度見えてきたということでした。

私たちの業界も変わりますね。私が今回の改正保険業法とコメントの金融庁の考え方を読んでいて、強く感じたことは、コンプライアンスとか規制が厳しくなるというよりは、「自分の提案が、『なぜそれだったか』と、自分できちんと説明できるか」これが問われていくのだと思いました。特別利益の提供とかではなく、しっかりお客様の意向を汲んで提案したことを「説明できる」ことが、本質です。

最後に私の好きな言葉です。

「続けていくには、変わるしかないんだ。だから、続けていくことは大事なんだ。」

です。FPナレッジは2018年にスタートして、8年目です。私たちも保険の仕事を続けていくために「変わるしかない」と思います。